いいちこCMが心に染みる理由|歴代の名曲と絶景ロケ地の制作秘話
テレビ画面に広がる雄大な自然のパノラマ、どこか哀愁を帯びながらも温かいアコースティックサウンド、そして静かに佇むガラスボトルのシルエット。「下町のナポレオン」の愛称で親しまれる大分県の本格麦焼酎「いいちこ」(三和酒類)のテレビCMは、1980年代の放映開始以来、お茶の間に心地よい旅情と癒やしを届けてきました。
移り変わりの激しい広告業界において、40年以上にわたりブレない世界観を守り続けている映像作品は極めて稀です。なぜあの映像と音楽は、世代を超えて私たちの心を掴んで離さないのか。心に染みる歴代CMソングの歩みから、息を呑むほど美しい撮影場所の選定基準、駅貼りポスターにまつわる舞台裏まで、その魅力を余すところなく解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:CMソングの代名詞であるビリー・バンバンの名曲群から坂本冬美による「また君に恋してる」の社会現象まで、音楽が果たした圧倒的な役割を総括。
- 要点2:国内外の厳選された絶景を巡るロケ地選定の哲学と、人が映らない風景にボトルだけを置く特異な演出手法を徹底解説。
- 要点3:アートディレクター河北秀也氏が築き上げた広告美学と、月替わりの駅貼りポスターが今なお絶大な支持を集める理由を解剖。
【歴代CMソングまとめ】ビリー・バンバンが紡ぐ名曲と坂本冬美「また君に恋してる」の奇跡
いいちこのCMを語る上で欠かせない最大の要素が、耳にした瞬間に情景が浮かび上がる歴代CMソングの存在です。その歴史の屋台骨を支え続けてきたのが、菅原孝・菅原進の兄弟デュオビリー・バンバンでした。
1980年代後半からシリーズの楽曲を手掛け、「さよならをするために」「琥珀色の日々」「君の詩」など、透明感あふれる歌声とアコースティックギターの音色でブランドのイメージを確立しました。派手な電子音や刺激的なサウンドが溢れるテレビの中で、彼らの素朴で深いフォークサウンドは、まるで一服の清涼剤のような安らぎを与えてくれます。
この黄金タッグから生まれた最大のヒット作が、2007年に発表された「また君に恋してる」です。もともとは「いいちこ日田全麹」のCMソングとして書き下ろされた楽曲でしたが、演歌歌手の坂本冬美が2009年にカバーしたことで社会現象級の大ブームを巻き起こしました。夫婦や長年連れ添ったパートナーへの褪せない愛情を歌った切なくも前向きな歌詞は、焼酎のターゲット層である中高年だけでなく、若い世代の琴線にも触れ、レコチョクやオリコンの上位を独占する異例のロングヒットを記録しています。
坂本冬美のカバーバージョンも後にCMへ逆輸入されるなど、ひとつの楽曲がアーティストの垣根を越えて愛され、ブランドの象徴へと昇華していった経緯は、日本の広告音楽史に残る快挙といえます。
【ロケ地の真相】どこか懐かしい風景はどこ?国内外の美しい撮影場所を追う
「この美しい場所は一体どこなのか?」——視聴者が思わず画面に見入ってしまう旅情豊かな風景こそ、いいちこCMの真骨頂です。ノスタルジーを刺激する田園風景や果てしなく広がる地平線は、国内のみならず世界各国の大自然でロケが行われています。
これまでに選ばれた主な撮影場所には、以下のような特徴的なロケーションが並びます。
- アメリカ・モニュメントバレーやオレゴン州:荒涼とした大地やどこまでも続く一本道が、自由と孤独の詩情を際立たせる初期の名作舞台。
- アイルランド・スコットランドの草原と古城:霧が立ち込める深い緑と古い石造りの建造物が、琥珀色に輝くお酒の深みと調和するヨーロッパ篇。
- イタリア・トスカーナ地方の田園:なだらかな丘陵地帯とサイプレスの並木道が、夕暮れの穏やかな晩酌時間を連想させる人気作。
- 日本の隠れた原風景(北海道・阿蘇・屋久島など):誰もが心の中に持っている「故郷の記憶」を呼び起こす日本の山河。
ロケ地選びにおいて徹底されているのは、「観光名所として分かりやすいランドマークをあえて外す」という点です。エッフェル塔や自由の女神のような記号的な場所ではなく、どこの国とも断定できない、けれど誰もが「いつか見たことがあるような懐かしさ」を覚える普遍的な風景が選ばれます。この意図的な匿名性こそが、見る人それぞれの思い出を投影させる余白を生み出しています。
【制作秘話】商品を押し出さない美学|アートディレクター河北秀也が仕掛けた広告革命
一般的なアルコール飲料のCMといえば、ジョッキやグラスに注がれるシズル感、タレントが喉を鳴らして飲むカット、宴席の賑やかさをアピールするのが定石です。しかし、いいちこのCMにはタレントが飲むシーンはおろか、人物の顔すらほとんど登場しません。
この革新的なアプローチを一貫して指揮してきたのが、日本を代表するアートディレクターの河北秀也氏です。1980年代前半、大分県の一酒造メーカーに過ぎなかった三和酒類が全国展開を図る際、河北氏は「商品を無理やり押し付けるような広告は生活者に嫌われる」と直感しました。
そこで編み出されたのが、「美しい風景の中に、ポツリとボトルが一本置かれている」という演出です。大自然の静寂の中に佇むいいちこのボトルは、まるで旅人がそこに置き忘れていったかのような詩的な佇まいを見せます。広告でありながら商業主義を感じさせず、上質な短編映画や絵画を眺めているような読後感を残すこと。押し付けがましさを徹底的に排除した引き算の美学が、結果として生活者の心に最も深くブランドを刻み込むことになりました。
また、大衆的な焼酎のイメージを刷新するために冠された「下町のナポレオン」というフレーズも、河北氏の卓越した言葉のセンスから誕生したものです。親しみやすさと格式の絶妙なバランスが、今日の確固たる地位を築く原動力となりました。
【駅貼りポスターの謎】月替わりで街を彩る名作ビジュアルと詩的なコピーの魅力
テレビCMと完全に連動しながら、40年以上にわたって都市の風景の一部となっているのが、全国主要駅の構内に掲出されるいいちこポスターです。毎月1回、季節の移ろいに合わせて必ず張り替えられるこの大型ポスターは、多くの通勤・通学客の足を止めさせてきました。
ポスターの特徴は、息を呑むような大判の風景写真やオブジェの写真に、ボトルの姿と、心に静かに刺さるわずか一行のボディコピーだけが配置されている潔さにあります。「愛していると言ってくれ、なんて言わないで」「人は、少しの思い出があれば生きていける」といった言葉の数々は、単なる商品の宣伝文句ではなく、日々の喧騒に疲れた現代人の心にそっと寄り添う文学作品のようです。
駅という最も忙しなく人が行き交う空間に、最も静かで情緒的なビジュアルを置く。このコントラストによって、駅貼りポスターは街の中にぽっかりと空いた「深呼吸できる空間」として機能し続けています。歴代のポスターを集めた展覧会や作品集が定期的に話題を呼ぶのも、広告の枠を超えたひとつの芸術として社会に受け入れられている証左です。
【2026年最新動向】三和酒類「いいちこ」が守り続けるブランド価値と新たな挑戦
デジタルメディアが主流となり、短尺で刺激的な動画がSNSを席巻する現代においても、いいちこの広告哲学は揺らぎません。近年では、ボタニカルな香りを強調した新商品「いいちこ下町のハイボール」などの若年層向けラインナップを展開しつつも、コアとなるCM表現では「変わらないことの価値」を提示し続けています。
最新の映像展開でも、最新鋭の映像美を用いながら、自然の雄大さとアコースティックな音色、そしてそこに寄り添うボトルの構図は堅持されています。YouTubeやSNS上でCM動画が公開されると、「見ているだけで肩の力が抜ける」「忙しい毎日の終わりにこのCMを見るとホッとする」といったコメントが数多く寄せられており、タイパや即時性を求める時代だからこそ、このスローな情緒が若いデジタルネイティブ世代にも新鮮な体験として響いています。
目先のトレンドに迎合せず、ただひたすらに生活者の情緒に寄り添うこと。三和酒類が貫くこの姿勢こそが、40年以上にわたる圧倒的なブランドロイヤルティを支える最大の強みです。
【いいちこ cm】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:いいちこのCMソングを最も多く歌っている歌手は誰ですか?
A1:フォークデュオのビリー・バンバンです。1980年代から数多くの楽曲を提供しており、メンバーの菅原進氏がソロ名義で歌唱した作品も含め、いいちこブランドを象徴する音楽として長年愛されています。
Q2:坂本冬美さんが歌う「また君に恋してる」はCMのために作られた曲ですか?
A2:原曲はビリー・バンバンが2007年に「いいちこ日田全麹」のCMソングとして発表したものです。その楽曲に惚れ込んだ坂本冬美さんが2009年にカバーアルバムで歌唱したところ大ヒットし、後に坂本さん歌唱バージョンもCM曲に採用されました。
Q3:CMのロケ地はどうやって決めているのですか?一般の観光地ですか?
A3:誰もが知る有名な名所旧跡ではなく、「どこか懐かしく、誰の心にもある原風景」をテーマに国内外から厳選されています。アメリカ、ヨーロッパ、日本各地の雄大な大自然や田園風景が選ばれ、具体的な地名を大々的にアピールしない演出が特徴です。
Q4:駅に貼られているいいちこのポスターはどこで見られますか?
A4:東京メトロやJRなどの主要ターミナル駅構内で毎月新しいビジュアルが掲出されています。また、過去の歴代ポスター作品は三和酒類の公式ウェブサイトや記念展示会、公式アートブックなどでも鑑賞できます。
まとめ:時代が移り変わっても色褪せない「いいちこ」の詩情
画面から伝わる旅の風、心に染み渡るメロディ、そして静かに寄り添う一杯のグラス。いいちこのCMが長年にわたり私たちを魅了し続けるのは、単にお酒の魅力を伝えるだけでなく、誰もが心の奥底に抱く「癒やされたい」「旅に出たい」という純粋な感情を優しくすくい取ってくれるからに違いありません。
移り変わりの激しい情報過多の時代にあって、変わらない美しさを届け続けるいいちこの映像表現。次にテレビや駅のホームでその姿を見かけたときは、少しだけ足を止めて、そこに流れる静かな時間に身を委ねてみてはいかがでしょうか。 (出典: いいちこ cm(Yahoo!ニュース))