東京9月の37日連続雨、気象予報士増田さんが語る異常気象の真実
37日ずっと雨、東京の9月はどうしちゃったの?~気象予報士増田さんに聞く――そのタイトルを見た瞬間、「37日?それって本当に?」と思った人も多いだろう。実際、東京都心の9月は記録的な異常降水に見舞われた。傘が手放せない日々が延々と続き、洗濯物は一度も外に干せなかったという都民の声がSNSに溢れ、気象庁の観測データにも、はっきりその「異変」が刻み込まれた。晴れるはずの秋口に、なぜここまで雨が降り続けたのか。その答えを求めて、気象予報士の増田雅昭さんに話を聞いた。
増田さんは日本気象協会やNHK気象情報などでも活躍する実力派の気象予報士で、専門的な知見をわかりやすい言葉で届けることで知られている。「37日ずっと雨、東京の9月はどうしちゃったの?~気象予報士増田さんに聞く」という問いかけは、単なる愚痴ではなく、実はきわめて深刻な気象学的問いを内包している。停滞前線、偏西風の蛇行、太平洋高気圧の後退、そしてその背後に潜む気候変動の影。増田さんはこれらの複雑な要因を一つ一つ丁寧に解きほぐしてくれた。
37日連続降雨という「前例なき記録」の全貌
気象庁のデータによれば、東京都心で観測された今回の東京都9月異常降水記録は、過去の統計と比べても際立って異質だ。37日連続降雨という数字は、単に「長かった」という話ではない。9月全体を通じて、まとまった晴れ間がほぼゼロに近かったということを意味する。ウェザーニュース株式会社の解析でも、この期間の降水日数は統計開始以来もっとも高い水準に達したと報告されている。
増田さんはまず、この記録の「異常さ」をこう表現した。「9月って、本来は夏の高気圧が少しずつ南へ退いて、秋晴れが顔を出し始める時期なんです。ところが今年は、その高気圧がなかなか退かなかった。退いたと思ったら今度は別の雨雲がやってきた。まるで出口のない迷路みたいでした」。気象予報業界でも、このような連続降雨パターンは「極めてまれ」とされており、各社の予報士たちが頭を悩ませた。
偏西風の蛇行と停滞前線――雨が止まなかった「二重の罠」
増田さんが最初に挙げた主因は、偏西風の蛇行だ。「偏西風というのは、北半球の上空を西から東へ流れる大気の流れです。これが正常に機能していれば、雨雲は数日で通り過ぎていく。でも今回はこの偏西風が大きくうねって、日本の上空で南へ大きく折れ曲がってしまった」と増田さんは説明する。その結果、停滞前線が東京近郊で"足止め"を食らい、雨をもたらす雲が同じ場所に居座り続けた。
停滞前線という言葉は、天気予報でよく聞くものの、その本質をきちんと理解している人は少ない。簡単に言えば、冷たい空気と暖かい空気がぶつかる境界線が動けなくなった状態だ。本来なら数日で移動するはずのこの前線が、偏西風の乱れによってほぼ固定されてしまった。東京はその真下に入ってしまったわけで、増田さんは「まさに最悪のポジション」と苦笑いした。防災気象情報の観点からも、この長期停滞は土砂災害リスクを大幅に高め、気象庁は複数回にわたって注意報・警報を発令した。
太平洋高気圧の「異例の後退」が招いた秋の迷走
偏西風の蛇行だけが原因ではない。増田さんがもう一つの主役として挙げたのが、太平洋高気圧の異変だ。「太平洋高気圧って、夏の晴れをもたらす主役なんですが、秋になると徐々に南東方向へ引き下がっていく。ところが今回は、引き下がるタイミングが極端に遅れた。夏の名残がいつまでも居座ったせいで、前線も追い出せなかった」。
この太平洋高気圧の動向は、エルニーニョ現象とも無関係ではないと増田さんは指摘する。エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなる現象で、世界規模の気象パターンに影響を与える。「エルニーニョが絡むと、日本周辺の気圧配置が通常とは大きくズレることがある。今回もそれが一因として疑われています」と増田さんは語った。気候変動の文脈でも、エルニーニョの強度や頻度が変化しているとする研究が相次いでおり、今回の異常気象はその延長線上にある可能性がある。
気候変動が「普通の異常気象」を変質させている
増田さんとの会話が深まるにつれ、浮かび上がってきたのは気候変動という大きなテーマだった。「昔は『異常気象』という言葉を使う場面が限られていました。でも今は、毎年どこかで使っている気がします。それ自体が、もう普通じゃない状況を物語っています」と増田さんは静かに、しかし確かな重みを持って言った。
地球温暖化によって大気中の水蒸気量が増加し、一度雨が降り始めると強く、長く続きやすくなっているというのは、気象科学の世界ではすでに広くコンセンサスを得た見方だ。日本気象協会も、近年の長期降水パターンの変化を継続的に分析しており、その傾向は統計的に有意であるとしている。ウェザーニュース株式会社が公開した長期データでも、東京における9月の降水日数は増加傾向にある。増田さんは「今回の37日というのは極端なケースですが、方向性としては気候変動の予測シナリオと一致しています」と述べた。
増田さん独占インタビュー――今秋の天気はどうなる?
「今後の見通しを聞かせてください」と水を向けると、増田さんは少し考えてから口を開いた。「正直に言うと、今秋の予測は非常に難しい。偏西風の状態が安定を取り戻せば、10月以降は秋らしい晴れが続く時期も出てくるでしょう。ただ、太平洋高気圧の挙動とエルニーニョの動向次第では、引き続き不安定な天気が続く可能性も捨てきれない」。
NHK気象情報でも増田さんの見解と合致する内容が発信されており、10月中旬ごろを境に大気の流れが切り替わる可能性が示唆されている。とはいえ、増田さんが強調したのは「予報の不確実性」だ。「天気予報の精度は上がっているけれど、異常気象が続く状況ではその精度自体が落ちやすい。だから、最新の防災気象情報を常に確認してほしい。特に土砂災害や河川の増水リスクは、雨が小康状態でも続く可能性があります」と力を込めた。
「観天望気」の時代から「データ」の時代へ――気象予報業界の今
インタビューの最後、増田さんは少し視点を変えて気象予報業界そのものの変化について語ってくれた。「昔は空の色や雲の形を見て天気を読む、いわゆる観天望気が主流だった。今はスーパーコンピューターと衛星データと機械学習が組み合わさって、恐ろしいほど緻密な予測が可能になっている。でも、今回みたいな異常気象の前では、そのコンピューターも首をかしげることがある」。
気象予報業界全体として、気候変動に対応した新しいモデルの開発が急務となっている。気象庁も予報システムのアップデートを継続中で、日本気象協会やウェザーニュース株式会社なども独自のAI予測モデルを強化している段階だ。それでも増田さんは「技術が進んでも、最終的に市民の命を守るのは正確な情報と、それを受け取る人間の判断です」と言い切った。その言葉には、気象予報士という仕事への誇りと責任感が滲んでいた。
あなたの「秋」を守るために、今できること
37日間雨が降り続けた9月が終わっても、気候変動の影響は続く。増田さんが繰り返したのは、「受け身でいない」ということだ。天気アプリをチェックするだけでなく、気象庁や日本気象協会が提供する防災気象情報を習慣的に確認し、自分の住む地域のリスクを把握しておくことが大切だという。ウェザーニュース株式会社のプラットフォームなども、局地的な雨量情報を細かく提供しており、こうしたサービスを活用する意識が求められる。
気象の「異常」が「日常」になりつつある時代に、私たちはどう向き合うべきか。増田雅昭さんの言葉は、単なる天気解説を超えた問いを投げかけている。37日間続いた雨は、ただの「不運な秋」ではなかった。大気が、海が、地球全体が何かを訴えているサインだったのかもしれない。あの長雨を「ちょっと変な天気だったね」で終わらせてしまうのは、少しもったいない気がする。 (出典: 37日ずっと雨東京の9月はどうしちゃったの気象予報士増田さんに聞く(Yahoo!ニュース))